シリーズ最後は、3/2に新宿文化センターで上演された「静と義経」です。
著名な作家のなかにし礼さんによる原作・台本ということで、主催の日本オペラ協会の60周年を祝うにふさわしい豪華なカンパニーに参加させて頂きました。なかにしさんご自身及びマスコミの宣伝効果もあり、初日は完売となるほどの大盛況となりました。満員の2000人規模の会場で歌う気分はもう最高でした!
この作品は初演以来26年ぶりとなるそうで、初演時の演出(なかにし礼さんご自身が担当)を再現する作業を、今回の演出の馬場紀雄さんを中心に出演者みんなで積み重ねてきました。おかげさまでお客様からも、”生みの親”とも言うべきなかにしさんからも満足のお声を頂くことができました。先に亡くなられた作曲の三木稔さんも見守って頂けたと思います。(カーテンコールでは、なかにしさんが敬意を表すために三木さんの写真を観客席に向かって披露されました。)
自分にとっては”分野外”とも言える様式の音楽に、当初は少なからず戸惑いましたが、指揮の田中祐子さんはじめ音楽スタッフの皆さんのご指導により本番では想定してたより遥かに楽しんで歌うことが出来ました。自分の芸術的な感性にこうしてまた新たなページが上書きされたことを心から嬉しく思います。
絢爛豪華な衣装とシンプルな舞台、日本人の心を揺さぶるストーリーと一流作家による台本の台詞が、いかにも日本人作品らしい独特の音楽と共にお客様の心の中に届いたなら本当に幸せです。カーテンコールで、スタンディングオベーションを含む大きな拍手に包まれながら、隣のなかにし礼さんが私を握る手の力は、とても80歳を迎える方とは思えない強さと温かさでした。
日本オペラ協会は毎年3月が本公演ですが、来年はまた今回とは全く別のジャンルの作品を上演予定です。私は出演しませんが、日本人作曲家による日本人のお客様のための新しい作品を今から楽しみにしています。