公演を振り返って その1 〜「椿姫」〜

しばらくぶりの更新です!

 

 

ロッシーニが若くしてオペラ作曲の筆を折った理由を問われた時に、「私は怠惰の虜になったのだよ」と答えたという逸話を何かの本で読んだことがあるのですが、誠に恐縮ですがまさにその心境でした…(すみません!)これからまた更新していきたいと思いますので、どうぞ引き続きよろしくお願い致します!

 

 

2019年の年明けからは、所属する日本オペラ振興会(藤原歌劇団/日本オペラ協会)の主催する3つの舞台に出演させて頂きましたので、ブログ再開の折にその3つをレポートします。

 

 

ますは1月27日の「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」(東京文化会館)。藤原歌劇団にとって最も重要なレパートリーのひとつとされる演目にアルフレード役で参加出来たことは本当に光栄なことで、当団の歴代主役級テノールの方々が出演された大役を務めたことは、生涯にわたり誇りに思う経験となるでしょう。

 

 

演出は、ありがたい事にもう何年もご縁の続いている、イタリアもののスペシャリスト・粟国淳さん。舞台セットおよび衣装をデザインされたイタリア人のAlessandro Ciammalughiさんとのコンビでのオペラ公演としては2015年の「ファルスタッフ」以来の巡り合わせとなりました。今回もいつものように細部にまで神経の行き届いた、イタリアの伝統を汲む本格派の舞台を提供して下さいました。ヴェルディの作品に限らずですが、この作品はやはり言葉が活きてくると物語の深淵さが違いますね。粟国さんでないとできない、深掘りされた「椿姫」は出演者として至福のプレゼントでした!

 

 

指揮の佐藤正浩さんとも共演を重ねて参りました。「コジ・ファン・トゥッテ」「魔笛」「セビリャの理髪師」そして今回の「椿姫」と、その全てが自分のレパートリーの中心となる演目でご縁が続いています。寛大で包容力ある大きな指揮で、このオペラを知り尽くしていると言われる東フィルの素晴らしい音色と共に私たちを歌いやすく導いて下さいました。(余談ですが、男声合唱団・慶應ワグネルソサエティをはじめ、マエストロの男声合唱でのご活動やオペラ研修所での若手歌手へのご指導にも勝手ながらシンパシーを感じつつ、オペラと合唱、プロとアマチュアのそれぞれの橋渡しとしての佐藤さんの存在は自分にとっての指針ともなっています。)

 

 

主役のヴィオレッタは光岡暁恵さん、その素晴らしい歌声でまさにこれぞ”プリマドンナ”という舞台でした!年齢やレパートリーが近いことからこれまでも度々共演させて頂きましたが、リハーサル中も含めていつもその声から刺激を受けています。その細身のお身体に充満したエネルギーをそばで感じる幸せはアルフレード役の特権ですね、最終幕ではもうウルウルです…。本番でもひときわ盛大な拍手が光岡さんに送られていました!

 

 

最後に、この作品の持つ普遍的な魅力は絶大なものがあって、自分にとっても初めて歌った時から現在まで、時を隔てても変わらず常に最高ランクの作品であり続けています。巨匠ヴェルディの音楽の偉大さと言葉の内容の深さを噛み締めながら、たった1回の舞台を惜しみつつ丁寧に歌わせて頂きました。我が国のオペラの殿堂である東京文化会館で東フィルと共に藤原歌劇団がお届けした「椿姫」。他に変えられない、貴重な機会を与えてくれた藤原歌劇団に、心から感謝しています。