キャストご紹介⑤

こちらのユーモア溢れるお顔は、バジリオ役の伊藤貴之さんです。

 

ロジーナの個人音楽教師としてバルトロの家に出入りするバジリオですが、最初は雇い主のバルトロに味方しつつも、伯爵から金銭や高価な指輪をもらうとあっさり寝返ってしまう、なんとも分かりやすい性格のキャラクターです。

 

 

バジリオはお世辞にも決して魅力溢れる役どころとは言えないかもしれませんが、バスの名アリアとして知られる「陰口はそよ風のように」の存在が、この役柄を主役級バス歌手の大切なレパートリーとして一気に引き上げてくれます。シャリアピン、ピンツァ、シエピ、クリストフ、ギャウロフ、レイミー、ライモンディ…あらゆる世代のスター歌手がバジリオをレパートリーにしているのは、きっとこのアリア有ってこそだと推察されます。そのくらい、劇中での「陰口はそよ風のように」のインパクトは絶大です!

 

 

今回そのアリアをまさに「絶大なインパクト」で披露してくれるのが伊藤貴之さん。ひと声聴けば分かるバスの声で、例えばアンサンブルの部分でも、この男声キャストが多いオペラの声のピラミッドの一番下で重厚に支えてくれます。

 

 

伊藤さんは昨年の藤原歌劇団本公演「ランスへの旅」(シドニー卿)でも同じ日生劇場でのロッシーニ作品で素晴らしい評価を受けていて、単に声量に頼るだけでなくロッシーニの歌唱技術もしっかり持ち合わせている貴重なバス歌手の一人としてご活躍されています。このバジリオでもきっとたくさんのお客様の記憶に残ることと思います。

 

 

個人的には、大学以来の長年の付き合いの末(門下も留学先も同じです)、ようやく東京で同じ組でのオペラ出演となることに感慨深いものがあります。同じ愛知県在住で全国で出演を重ねる者同士、今回は格別に良い思い出の舞台となりそうですね!

 

(続く)