続いてはバルトロ宅の家政婦、ベルタさんの登場です。
ベルタは伯爵に対する敵役のバルトロに仕えているものの、特に主人のバルトロの味方になるわけでもなく、このドタバタ劇をどこか冷めた心持ちで斜め上から眺めている…とでも言えるでしょうか。ともかく、ストーリーの本筋には関わらないという意味では”脇役”の1人なのは間違いありません…が…?
が、しかし、です。(笑)
ベルタさんは例えば歌唱部分が全く無いシーンでもさりげなく登場してその度にインパクトを残してくれますし、”デザート・アリア”と呼ばれる素敵な単独場面もロッシーニから与えられています。また、そもそもこのオペラの登場人物は男性が多く、合唱(今回14名)も全員「男声」だけで編成されていることから、舞台上の「女声」はメゾソプラノのロジーナとソプラノのベルタの「2人だけ」なのですが、各幕のフィナーレで全員が歌う部分ではベルタの歌唱パートはソプラノゆえに常に主旋律を担当することが多く、彼女の声楽的役割は完全に「メイン・キャラクター」となっているのです!つまりよほど声楽面で充実した歌手でないと男声陣に対抗できないことから、キャスティングが難しい役柄とも言えるかもしれませんね。
山口佳子さんのベルタはまさに主役級!ロジーナの富岡明子さんとお二人で、そのとびきりの歌声でむさ苦しい野郎どもで溢れかえる舞台にしっかりと華を添えて下さいます。山口さんともイタリア留学中に知り会った後、数年間それぞれの舞台生活を経て今回ついにオペラ初共演が叶いました!コンサートではご一緒しましたが(2015年には富岡さんと山口さんと3人だけで日本ロッシーニ協会定期演奏会に出演させて頂きました)、演技を伴うオペラでの共演はやはり格別ですね!
舞台上の人数が増えた時は、皆様ぜひベルタの声と演技にご期待下さい!
(続く)