お二人目はこの作品の憎めない”悪役”(笑)、バルトロ先生です。
悪役といっても、例えばシリアスなオペラの悪役のように人の命を狙ったり、凶器を振りかざしたりする訳ではありません(棒切れでチャンバラごっこ程度はやりますが!笑)。それどころか、この「セビリアの理髪師」の後日談である「フィガロの結婚」(モーツァルト作曲)の中で、バルトロはフィガロの実の父親(=味方)だったことが判明するという”大どんでん返し”もあるくらいです!
とは言えブッファ(喜劇)には敵役が付きもの。この作品ではロジーナを巡って、”伯爵&フィガロ チーム”と”バルトロ&バジリオ チーム”という分かりやすい図式でストーリーを盛り上げてくれます。いい歳して、孫ほど歳の離れた若い娘を半ば監禁状態にして強引に結婚をせまるなんて、昔も今も「女の敵!」のそしりを受けそうな普遍的なキャラクターですね!
ロッシーニはそのバルトロの性格を見事に音楽だけで表現していると思います。レチタティーヴォと呼ばれる語り中心の部分では、「畜生め!」だの「なんて奴だ!」だの、癇癪を起こすゆえのビックリマーク(!)の目白押しで楽しませてくれますし、アリアでは超絶早口で小言を繰り出し、ロジーナを閉口させてしまいます。数あるロッシーニの早口アリアの中でも、きっと最高難度のレベルのスピードではないかと思いますね…(マエストロ園田さんのさじ加減はいかに…汗!)
音楽的にも演技的にも、ひと癖もふた癖もある難役・バルトロを演じてくれるのは増原英也さん。私より年齢はお若いですが、キャリア十分の本当に頼りになる”敵役”です!オペラはもちろん、ミュージカルや映像の世界にも精通されていて、歌も演技もとっても魅力的な歌い手さんです!何よりもその声を一度聴いた方はきっとまた、増原さんの声を聴きたくなることでしょうね。
リハーサル後の食事会にも欠かせない、初日組の「幹事長」(古い!笑)でもある増原さんのバルトロに、皆さんどうぞご注目下さいませ!!
(続く)