11/30愛知県立芸術劇場での『セヴィリアの理髪師』に向け、いよいよリハーサルが佳境に入ってきました。
イタリア語の原語で全曲上演、しかも最後の伯爵の大アリア付きで上演される機会は今後もなかなか巡り合えない事かと思い、ましてや2500席の愛知県立芸術劇場大ホールでの上演は現役のうちはもう二度と無い可能性が高いので、本番への楽しみよりも「これが最後かも……」という寂しさがだんだんと募ってきています。
ロッシーニだけに限らずイタリアのオペラブッファの代表作でもあるだけに、全編にわたって複雑な演技やめまぐるしく移り変わる登場人物の心の動きが細部に至るまで書き込まれていて、キャスト陣それぞれここにきてようやく整理出来てきたように思います。ドタバタ劇の中にも、やはり「真実(verita’)」と「愛(amore)」がしっかりと反映されてこそ、イタリアオペラの醍醐味というものでしょう。(ドイツのオペレッタとはやはり違う印象を受けます。)
写真は昨日の最終通し稽古。あとは「オケ合わせ」または「Prova italiana」と呼ばれる、演技無しでの音楽稽古と、本番の舞台でのゲネプロ(最終総稽古)を残すのみです。
本番当日までの数日間、体調管理と休息、コンディション作りを最優先に、今の出来ること全てを発揮できるように仕上げていきたいと思います。
……それにしても最後の大アリア(約8分あります)の大変さは……(汗)
伯爵はオペラ冒頭から誰よりも登場シーンが多いだけでなく、大アリアまでに声楽的にもさんざんブッファ的な事(例えば酔っ払いの兵隊に扮して奇声をあげたり、偽の音楽教師に化ける際は鼻にかかった声色をわざと使ったり……)をやり続けた果てに、最後の最後でこれまでで最高の美声で、超絶技巧アリアを歌わなければなりません。
ロッシーニの他の作品でも(『湖の女』『ゼルミーラ』『セミラーミデ』あたりも超難易度の高いアリアとして有名です)テノールへの超絶技巧アリアは散見されますが、決してブッファオペラではありませんし、3時間半の上演時間の最後に配置されることもありません。この『セヴィリアの理髪師』の大アリアだけがカットされ続けてきた原因はこういう理由にあるのかもしれないなと実感しつつあります。
ええい、ままよ!!!
……とヤケクソになりたい気持ちも無いわけではありませんが、そこはロッシーニ、ヤケクソで誤魔化せる音楽ではありません!むしろ丁寧に、最新の注意を払って、かつ、さも楽々と超絶技巧を歌いのける「かの様に」(笑)演奏できたらいいなと思います。
ロッシーニを知り尽くしている園田マエストロを頼みの綱に、この絶好に機会に「本当の『セヴィリアの理髪師』の姿」をなんとか皆様にお届けできたらと思います。頑張ります!!