共演者さんの紹介③

シリーズ第3回は、主役のアミーナの母親テレーザを演じられる牧野真由美さんです。

写真のご本人のご表情どおり、母性や優しさ、寛大さ、柔和、懐の深さ、慈愛など、メッゾソプラノ(コントラルトも含む女性低声パートの歌手)に求められる様々な要素の全てを備えていらっしゃる牧野真由美Makino Mayumiさん。

 

このオペラでプリマドンナとして作品全編の中心に位置するアミーナに対し、恋人役のエルヴィーノや合唱団も含めた他の全ての出演者の中で、唯一最初から最後までアミーナの見方で居続ける”庇護者”こそ、牧野さん演じるテレーザその人なのです。

 

『カヴァッレリーア・ルスティカーナ』のルチーア、『ヘンゼルとグレーテル』の母親、『イル・トロヴァトーレ』のアズチェーナ、あるいは母親役ではないけれども主役ソプラノの庇護者としての『蝶々夫人』におけるスズキなど、メゾソプラノにとっての母親役はそのレパートリーの上で特別な意味合い・位置づけを持つのではないかと思います。

 

 

『夢遊病の女』第1幕最終場面、舞台上の全ての人から濡れ衣の誤解を受けて糾弾されるアミーナにとって、テレーザの存在は正に唯一の味方、理解者として存在しています(厳密にはテレーザは本当の母親ではなく、アミーナの育ての親という設定です)。

さらにアミーナのライバルであるリーザ(詳細は前回のブログ文章で紹介)の残した動かぬ証拠を毅然として本人に突きつけ、アミーナの誤解を解く決定的な役割を果たすのもテレーザです。

 

 

『夢遊病の女』の舞台はあくまでもスイスですが、作曲したBELLINIも台本作家のROMANIも、疑いなく生粋のイタリア人、つまり「愛Amoreと母親Mammaの国・イタリア」の血が流れているわけで、作品中における”マンマ・テレーザ”の位置付けは当然のように印象深い存在と成り得ています。

演出上の「ネタバレ」を避ける意味でこの紹介シリーズは特に慎重に文章を綴っていますが、あえて個人的感想を吐露するなら、第2幕冒頭に続く間奏曲及び直後のテレーザとアミーナのシーンは、稽古中に見学していて幾度となく胸を締め付けられる名場面だと思います。

 

 

 

牧野さんとは今回が初共演ですが、この後も愛知県豊田市で10月にモーツァルトの『戴冠ミサ曲』で再共演させてもらう予定です(スケジュール欄の該当チラシ参照)。今はじっくりと稽古場でその素晴らしい演技と歌を見て、聴いて、感じることこそ、かけがえのない経験・貴重な時間となっていることが本当に幸せです。

 

 

自分が言うのはお門違いですが、若い女性低声歌手の皆さん、是非この機会に牧野さん演じる母親役をご覧なってはいかがでしょうか?(……余計なお世話様でした!!)