ピストーラとコンビの”バルドルフォ”もまた、品行不良(笑)な役どころ!
シェイクスピアの原作では、酒を飲み過ぎるために鼻の頭が赤く腫れ上がり、ぶつぶつが出来てまるでザクロの実を割ったような「柘榴鼻(ざくろばな)」がトレードマーク。今回の演出にはその外見的特徴は反映されていませんが、ぐうたらで酒飲みで大食いで下品で不潔で喧嘩っ早くて(その他割愛!)、先出のピストーラと共にしっかりと「ヨゴレ役」を担ってくれています。(褒めていますよ!笑)
最終幕に皆が総出で扮装してファルスタッフを突っつき回して懲らしめるこのオペラのハイライトの場面では、バルドルフォだけがその不快な悪臭を放つおかげでファルスタッフに正体を見破られてしまう(そして当然のごとく手荒い懲罰を喰らう)という、なんとも徹底したヨゴレ役っぷり!この作品が喜劇として成立する上で決して外せない登場人物でもあるのです。
バルドルフォとピストーラはファルスタッフの「従者」とされているものの普通の主従関係とは一線を画していて、時に刃向かい、抵抗し、腕力で敵わないとなるとついには貴族のフォードに寝返って復讐を試みるも、最終的にはファルスタッフの下に納まります。今回の岩田達宗さんの演出ではこの悪童3人(+黙役の”ロビン”を加えた4人)の愛憎入り混じる想いにしっかりとスポットライトを当てていて、笑い話の中にも胸がジーンとする要因となっています。
やんちゃでも憎めない男、それがバルドルフォ。
(※写真左が初日組の井出司さん、右が楽日組の川崎慎一郎さん。稽古場と同じく、本番の舞台でもフルスロットルで暴れてくれることでしょう!)