美術館で地元ゆかりの詩人の歌を

神奈川県の平塚市美術館で日本歌曲を歌ってきました。

 

大正〜昭和中期に生きた中勘助(なか かんすけ)という作家、詩人が、平塚市を拠点に創作活動を行っていたことから地元住民や研究家が「中勘助を知る会」を発足させ、同作家が平塚に居住して100周年を記念したレクチャーとコンサートが開催されました。この機会に初めて知った詩人とその作品(ほんの一部ですが)でしたが、地域の風情が慎ましくも鮮やかに描写されていて、独特の言葉遣いがアクセントとなった詩文はとても魅力的に感じました。

 

 

作曲は平塚にほど近い大磯にお住まいの中村晃也先生で、作曲のご専門は別分野にあり歌曲の本格的な作曲はこれがほとんど初めてとのことでしたが、過去の上演(初演をソプラノで、その後フルートをソロに器楽曲として上演されました。)も踏まえて、演奏上の留意点など懇切丁寧にリハーサルで直接ご指導頂きました。普段は歴史上の(=故人の]作曲家の作品ばかりなので、今回作品の創造主からまさに”生きた言葉”を頂きながら楽曲に向き合えたのは大変貴重な経験となりました。

 

 

平塚市美術館にはたくさんの人が詰めかけ、200席ほどの会場は数人の立ち見も出る超満員でした。前半のレクチャーのあと休憩を挟んで、後半はまずこれから歌う歌曲の詩文が朗読され、続いて中村晃也作曲「しづかな流れ」(全6曲/約25分)をテノールとピアノ伴奏(新国立劇場や藤原歌劇団公演でいつもお世話になっている藤原藍子さん。)でご披露させて頂きました。お客様がじっくりと詩と音楽は耳を傾けてくれている感じが伝わってきて緊張もしましたが、硬軟の色彩豊かな藤原さんの伴奏に乗せられながら、自分なりに作品の魅力を楽しみながら歌うことが出来ました。拍手を頂いた平塚のお客様、温かい労いの言葉をかけて下さった中村先生、地域の文化芸術の普及振興に大変有意義な会を開催された中勘助を知る会の皆様、ありがとうございました。

 

 

 

(※終演後の会場で会の皆さん、前半のレクチャーを担当された研究家の木内英実さん、中村晃也先生、藤原藍子さんと。)