日生劇場の「セビリアの理髪師」は仕上げのリハーサルです。
稽古場で画像を収める機会がなかなか無くて、予告しておきながら一向にレポート出来ず申し訳ございません!そうこうしているうちに、約1か月間続いた稽古場での立ち稽古は全て終了し、明日のオケ合わせ(オーケストラと歌だけの音楽リハーサル)を経てあさってからいよいよ本番会場の日生劇場の舞台で最終リハーサルを残すのみとなりました。
今回は再演ということで画像を見せてもネタバレにならないので(笑)、むしろ貴重な”稽古着でのリハーサル風景”をご紹介します。
オペラの稽古着は特に決まったものはありませんが、基本的には動きやすい格好が好まれるようですね。音大やオペラ研修所などで教えられることでもありますが、芝居に不要なアクセサリーや腕時計などの装飾品は外し(共演者にからまったり接触して怪我の恐れもあるため)、髪の長い人は束ねたりアップにして顔(=表情)が隠れないようにします。あとは演じる役柄に応じた格好(女性の役ならスカート着用、和物の演目なら着物や浴衣や作務衣など)であったり、本番で使う小道具の扱いに支障のない格好でリハーサルに臨みます。今回だと、アルマヴィーヴァ伯爵役は衣装のポケット中に手紙や金子袋、ピストルなどたくさんの小道具が収納されてるため、稽古の時も私物のジャケットを着てなるべく本番どおりに近いお芝居が出来るよう工夫しています。特に喜劇の色合いが濃い「セビリアの理髪師」ではスピード感あふれる演技の楽しさが見所でもあるので、衣装の中の小道具を右手と左手のどちらの手で扱うか、など細かくシミュレーションして稽古を重ねていきます。
また今回の舞台装置は2階立て&回り盆&八百屋舞台(舞台前方に向けてステージ全体が斜めに傾いています)ということで足元のさばきも注意が必要で、普段はスニーカーなどでリハーサルしていたキャストも本番が近づいた通し稽古では本番用の衣装の靴を着用していましたね。オペラ歌手は歌いながら歩いたり走ったりすることも多いので実は怪我も多い職業で、こうした仕上げのリハーサルの段階で急に革靴やヒールの高い靴に履き替えたことが原因で足の怪我が発生することもしばしばあるようです。とくに上下に段差がある舞台はうっかり踏み外したりすることもあるので(歌っている時は足元ではなく客席や指揮者の方向に視線が行きやすいので)、写真のような階段での楽しそうなシーンでも心の中では慎重に足元にも気を配っています。
そしてコロナ禍ならではの稽古風景と言えば「マスク姿」ですね。声の強弱や響きの色合いなどを扱う職業としては”致命的”とも言える厳しい制限ですが(泣)、無事に公演が行われるためにみんなで我慢して乗り越えています。発せられた声はもちろん、歌うための呼吸の具合にも関わるため、出演者はそれぞれ自分の好みのマスクを着用してリハーサルしています。この数年間で多種多様なマスクが発売されるようになり、休憩中にお互いのマスク効果について雑談する風景もこの業界の「あるある」になってきました(笑) 特に演技においては相手の口もとの表情が全く見えないためどうしても気持ちがノリにくい環境なのですが、本番ではキャストはマスクを外して演じられるので、かえって新鮮なリアクションをお届け出来るんじゃないかと思います!(でも残念ながら合唱の皆さんはマスク姿なんだそうです…泣)
明日のオケ合わせでもマスク着用が義務付けられているため、オーケストラとの音量のバランスやキャスト間の声の強弱の調整などは難しそうですが、全てはみんなで無事に上演するため!マスクの中で唇を噛みながら(笑)、決められた条件の中で精一杯努力したいと思います。
3月からスタートしてここまでは出演者、スタッフの体調も含めてすこぶる順調!イタリアのアイデア溢れる粟国淳さん演出の「セビリアの理髪師」の舞台を、どうぞお楽しみに!(「チケットの売れ行きが大変好調です」と主催者発表がありました。良い席はお早めに、とのことです!!)
(※写真は稽古場”スタディオ・アマデウス”でのリハーサル風景。マスクと手袋着用、歌手の歌う方向、向かい合って歌う時の距離など、コロナ禍での上演ガイドラインを遵守して演出されています。)