新国立劇場での「ランスへの旅」公演が終わり、次は名古屋で「ホフマン物語」です。
新国立劇場(1800人)から愛知県芸術劇場大ホール(2700人)へ、巨大なオペラ会場での出演が続きます。地元では「(愛知)芸文」の愛称でも親しまれる愛知県立芸術文化センターの大ホールは大学生時代に初めてオペラに出演したスタートの場所であり、もちろんこの地方での最高のステージとしてゴールを目指す劇場でもあります。2013年に「セビリアの理髪師」(名古屋二期会主催公演)で主演して以来6年ぶりとなりますが、今回も同じくテノールの出番が非常に多い=大変な作品での出演ということで、何か因縁を感じますね。
「天国と地獄」の音楽で有名なオッフェンバックが作曲したこの「ホフマン物語」のタイトルロール、ホフマン役は今回が初めての挑戦=初役です。全5幕に及ぶ”巨大で強大な”作品(バレエのシーンこそ入りませんが、フランスのいわゆる「グランド・オペラ」の分野に近い規模でしょうか?)ですが、内容がホフマン自身の恋愛遍歴の短編集、自叙伝的な構成のためもちろん全幕に登場し、他のどの役と比べても歌も演技も時間や内容がとても充実しています。かと言って「オランピアのアリア」や「舟歌」のようなよく知られたアリアがあるわけではなく、「セビリアの理髪師」や「愛の妙薬」などイタリアオペラで出番の多いテノール役とはひと味違いますね。
3〜4人のプリマドンナを相手に各幕ごとに別々のラブストーリーが与えられ、それぞれ趣の異なる世界観を表現しなくてはならない声や演技の多様性と耐久力が求められる…難しさと楽しさを交互に感じながら、他のキャストの何倍もの時間のリハーサルに参加して、暗譜も膨大な量で、と苦労も多いかもしれませんが、そのぶん芸術的幸福感を多く長く実感できる…要するに、「自分の好きな役柄、好きな演目」ということですね!
同じ組のキャストだけで16人、先日の「ランスへの旅」とほぼ同じくらいのソリストが稽古場にひしめき合っています。(ちなみに近年出演した他の作品と比較すると、「夕鶴」ではソリストが4人、「バスティアンとバスティエンヌ」では3人でした!)合唱も入れると「ランスへの旅」よりもさらに多くの出演者が参加する、まさに稽古場からすでに「グランド・オペラ」の魅力溢れる作品です。この地方ではなかなか上演機会が無いので、是非たくさんの人にご覧頂けたら幸いです。皆さまどうぞ芸文にお越し下さいませ!