次は一番最初に舞台に登場する、フィオレッロのご紹介です。
オペラの冒頭。伯爵の家来であるフィオレッロは、まだ夜が明けぬ早朝にロジーナの家のそばに街の楽士達を集めて、伯爵のラブソングの伴奏を手伝います。もちろん伯爵の命令を受けての助太刀ですが、思ったような反応がロジーナから無かったことから伯爵が消沈しているところに、楽士たちがこぞってお駄賃をせびるので伯爵は騒動になるのを怖れて皆を追い返します。首尾よく務めを果たせなかったフィオレッロに八つ当たりする伯爵、でもオペラの冒頭から万事うまくいってはそのあとの楽しみがいが無いってものですよね!
演出の粟国さんは、フィオレッロのことを「フィガロになれなかった男」とお話ししていました。そう、フィガロも伯爵に仕える者としてフィオレッロと同じ階級の人間ですが、フィガロには”何でも屋”の名のとおり、抜群の才気と行動力、物事をうまく取りまとめる頭の回転の良さが備わっています。逆に言えば、冒頭のこのフィオレッロのシーンで、「どうやら並の助っ人じゃあ伯爵の恋は成就しないぞ」というメインストーリーのハードルの設定が見て取れるわけですね。
フィオレッロ役を演じられるのは清水勇磨さん。実は今回のプロダクションは一般公演以外に、学生を対象とした公演がたくさん予定されていて、合計公演数は全部で15回にもなります。その全ての公演でフィオレッロを務められるのか清水さん。他は全員ダブルキャスト(伯爵はトリプルキャスト)ですが、清水さんだけは地方公演も含めて唯一、全公演で欠かせない歌い手さんなのです。
組が違うと演技も音楽のタイミングも微妙に違うものですが、体の大きな清水ならどんなことも受け止めてくれそうで(笑)両組キャストみんなも安心してリハーサルに臨んでいます。(フィオレッロ役は待ち時間も長いのですが…稽古場での忍耐強い姿勢にいつも感心させられています。)
オペラの第一声はフィオレッロですので、お客様には清水さんの美声を聴いてすぐにお耳を”オペラモード”にして頂けると思います!
(続く)